対策を講じてもその効果を見るのは何年も何十年も待たなければならない。レスター・ブラウン氏らの2030年予測はこのような超長期の視点からの人類に向けた警告として受け止めることができる。彼の予測は、激しく変化しつつある経済システムの変革期の中にあって、中国における耕地面積の減少や、世界的な肥料投入の停滞など農業食糧生産における新たな傾向に着目してその意味するところを超長期の予測の姿で示したものといえる。
経済・社会にかかわる不吉な予測は現在の状況の中にある危険な兆候に対する警告であり、それを回避するための努力を呼びかけたものと考えられる。危険な状態の予測は、対策を講じることによってその実現が阻止される、つまり予測そのものがはずれることを期待している。
7 世界食糧問題の課題
耕地の拡大は可能性は今や限られたものであり、自然環境の保全のためにそれは抑制いされなければならないことが多くの人によって認識されつつある。日本、韓国、台湾の歴史的経験と近年の中国に見られるように、人口の増加、経済の成長に伴う農用地の住宅地、工業用地、道路等の他用途への転用により最良の農地が失われるのに加えて、農工間格差の拡大による条件不利地域において耕作放棄地の拡大している。新たな農地の開拓の可能性はその多くが熱帯の森林地域にあり、森林の破壊が土壌の劣化や、自然生態系や砂漠化など地球のの気象に及ぼす深刻な影響に対する研究報告も多く出されてる。
食糧生産もう一つの要因である単収の増加が化学肥料など投入の増加によって今後も継続できるのか。IRRIなど国際農業研究機関の研究費、人員が近年大幅に削減されてきているが、これが品種改良等による単収の増加のスピードにどう影響するか。潅漑投資の削減が長期の農業生産とどのような関係があるか。年間600万ヘクタールといわれる砂漠化をくい止めることができるのか。地球温暖化は食糧需給にどのように影響するかなど長期、超長期の食糧生産に影響する懸念材料は数多くある。しかし、
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